花火の音が止むと、俺は立ち上がった。

「…送っていけねぇけど…気をつけて帰れよ」

「…うん」

「じゃあな」

「新明くん」

振り返った俺に、おまえは言った。

「またな…って、いつもみたいに言ってくれないの?」と。


何言ってんだよ、もう会えるわけねぇだろ。


「言って…」

俺だって!
会いたい!
会いたいに決まってるだろ…


「バカか、おまえ。俺たちはもう…」

俺の言葉を遮るように、おまえは言う。


「あなたは剣道部の先輩で、私はその後輩よ。
ただそれだけの関係でしょ?」

「博子」

「だからまた会えるでしょ?」

参ったなぁ。

立場が逆になっちまった…

会うのをためらっていたおまえが、
今、俺を引きとめようとしている。

そして、引きとめようとしていた俺が、
今は会うことをためらっている。