「私、ほんとうの世界では仕事が忙しくて…紗瑛が死んだときそばにいてあげられなかったんだ」


…そっか。

だから紗和先生は、時間を戻したかったんだ。


いつも優しく笑うその裏に、こんなに悲しいことがあったんだ。


「でも…紗瑛のおかげで少し明るくなれたわ。」


…だからかな。

前の世界で4月に飲んだコーヒーより甘いのは。


紗和先生が少しでも前を向けたからなのかな。


「紗和先生…コーヒー、美味しいよ」


一口飲んで、あたしも微笑んで見せた。