紗和先生の娘…紗瑛ちゃんは、とても賢い子で利発的だったらしく、自分が病気で長く生きられないということも、おそらく理解してたんじゃないかと言う。


「私は幾度となく自分を責めたわ。どうして健康な子に産んであげられなかったのかしら、ってね」

…紗和先生。

紗和先生のせいじゃないのに。


「でもね?紗瑛…いつも私に言うのよ。お母さん大好きって…」


どんなに治療が辛くても。

どんなに手術がこわくても。

私を責めたりしなかった。


「そして、ついに紗瑛の容態が急変して…」



そこまで言って、紗和先生は黙った。


…え。

紗和先生…泣いてる。

小刻みに肩がふるえていて。

切れ長の目からは一粒の涙がこぼれた。



「もう話すことも億劫なはずだったのに…
最後に…お母さんありがとうなんて言うから…」


最後まで、そばにいてあげたかったのに。

「泣いちゃってね…気づいたらこっちの世界にいて。いつものようにこのイスに、すわっていたわ」


ふふっと、いつものように笑う紗和先生は、無理してて、やっぱり老けて見えた。