■ルナside■
「ルナ様、学校までお送りいたしますよ」
そう言いながら、家にお手伝いさんとして雇われている佐伯さんはあたしの前で、頭を下げた。
「いいって。一人で行けるから。」
白髪の混じったの頭に向かってそう言えば、佐伯さんは顔をあげて少し困った表情を浮かべた。
「しかし和己(カズミ)様が…ルナ様を必ず送って行くようにと…」
“和己”というのは、パパの名前。
その名前に、あたしは大きく溜息をついた。
パパは何にも分かってない。
何のために、あたしがお嬢様学校なんかじゃなくて、普通の学校を受けると言ったのかも。
何かといえば、すぐにあたしを佐伯さんに頼んじゃって。
少し不機嫌になったあたしに焦ったのか、
「も、申し訳ございません、ルナ様っ」
と、佐伯さんはひたすら謝ってくる。
本当嫌だ。こんな生活。
謝る佐伯さんに、あたしはまた大きな溜息をついた。
「もういい。あたし一人で行きたいの。パパにはママから上手いこと言ってもらうから、佐伯さんは心配しないでね」
それだけ言って、あたしは佐伯さんに背を向けて歩き始めた。
家族3人と、10人近いお手伝いさんで暮らすこの家は、あまりにも大きいもので。

