『はいはい、今降りる』
そう返ってくることだって、あたしは分かっていた。
唯人はあたしの幼なじみだ。
両親が出張でいないことが多いあたしは、小さい時はよく唯人の家に預けられた。
寂しかったけど、預けられたその先が唯人で良かったって思ってる。
そんなことを考えていれば、
「おはよ、真帆」
唯人はもうあたしの前に立っていた。
「おはよ、唯人」
「うん」
「誕生日おめでとう」
「…それさっきも聞いた」
「でも、顔見て言ったのはこれが最初だよ?」
そう言ってあたしが笑えば、
「そうだっけ?」
なんてとぼけながらあたしの頭をなでる唯人がいた。恋愛感情だとか、そういうのじゃなくて。あたしと唯人の間にあるのは家族愛だと思う。
同い年だけど、唯人はずっとお兄ちゃんで。
あたしを、まるで壊れやすいものを扱うように触れてくる唯人も。きっと同じことを考えてるんだろうなって、確かめたわけじゃないけど確信できる。
「プレゼントは?」
その言葉にハッとして、あたしはかばんの中からプレゼントを取り出す。
「あ、そうそう。これ。」

