一階にある家は、エレベーターに乗る必要がなくて、結構気に入っていた。
ガチャリと鍵を開けて入れば、誰もいない部屋。
「ただいまー」
その言葉に帰ってくる「おかえり」はない。
いつものこと。
もう慣れたこと。
憧れたことは何度だってあった。
『今日の夕飯、何が食べたい?』
お母さんにそう聞いてもらいたかった。
『明日、一緒に遊ぶか!』
お父さんにそう誘ってもらいたかった。
でも両親から出る言葉はいつだって
『ごめんね』だった。
その憧れは、憧れで止まって、両親にぶつけることはない。
「大丈夫だよ」
いつの日からか、あたしの口癖になっていた言葉。

