■真帆side■
入学式は、結構あっけなく終わった。
唯人とはクラスが別れたものの、それほど寂しくはなかった。
もう、唯人がどこにいても見つけられる自信があたしにはあったから。
そのくらい、あたしの中での唯人の存在は家族同然…というよりは家族以上のものだった。
その日、入学式とショートホームルームが終わると、唯人はあたしの教室の前で待っててくれて。何のためらいもなく、あたしは唯人と一緒に校門を出た。
手をつなぐわけでもなければ、キスをするわけでもない。
ただ唯人が頭や髪に触れてくるのを、自然と受け入れる。
ただ並んで一緒に帰ることが、一番楽しく感じた。
紫色と茶色のマンションの間で、あたしたちはバイバイする。
「また明日ね、唯人っ」
「ん、明日」
その言葉で、いつも通りあたしたちは別れた。

