あたしは目を見開いたまま。



視界には赤い月がぼんやりと映る。





唇が離れると、ソイツはポケットから両手を出して、ウーーーーーンっと背伸びをした。


まるで、月を掴むかのように・・・





「...じゃぁ、俺行くわ。」




ソイツは何もなかったかのようにそう言ってあたしに背を向けた。





「ちょっ...ちょっと待ってよ!!」




公園にあたしの怒鳴り声が響く。


ソイツは顔だけチラっと振り返る。




「な、な、なんであたしキスされてんの?!ってか、なんなの?!?!あんた誰?!」




「...夜だし、そんな大声出すと警察きちゃうかもよ?」




ソイツはフッと笑う。





「...なんなのあんた!!意味わかんない...」




「あ..俺?俺は研史。10月24日生まれで多分A型のピチピチの20歳。」




「...誰が自己紹介しろって...」




「あ...コレやるわ」




ソイツはそう言って胸ポケットから何かを取り出して、あたしに向かって放り投げた。




「...え?!ちょっと?!」




「もー仕事いかなきゃだから...またね」





ソイツ・・・研史はそのまま気だるそうに歩いて公園を出て行った。