「月、綺麗やね」
急に背後から聞こえた低い声にビクッとした。
振り返って、声のした方を見ると、真後ろにある滑り台に仰向けに寝そべってる男がいた。
・・・うわっ・・・変な人かもしれない。無視して行こ・・・
そう思って、足を進めようとした時、またソイツが言った。
「月、綺麗やね」
少しだけ振り返る。
ソイツは寝そべっていた身体を起こして、あたしに向かって言った。
「月、綺麗やね」
「....うん。」
ソイツがあまりにも綺麗で・・・
でもどこかミステリアスで・・・
思わず、返事をしてしまった。
「よっこいしょ...」
ソイツは滑り台から立ち上がると、あたしに向かって歩き出した。
180cmはあるだろう背丈で黒いスーツを着て、クシャクシャっと無造作にセットされた髪型。
両手をポケットに突っ込んで、気だるそうに近付く。
ソイツから発せられている甘い香りがあたしの鼻をくすぐる。
ソイツはあたしの横に来て、両手をポケットに突っ込んだまま身を屈めて・・・
チュッ・・・とあたしにキスを落とした。