その日。
研史がお店に出かけるのと一緒にあたしも研史の家を出た。
マンションノエレベーターを降りてエントランスに出ると、急に前を歩いていた研史が振り向いた。
「うわぁ!なに急に!!」
両手をポケットに入れて、いつものように黒い(・・・今日は薄いストライプが入ってる)スーツをかっこよく着こなして、クシャっとした無造作ヘアーの
・・・誰が見ても夜の臭いプンプンの・・・
・・・イケメンがちょっと照れたような顔をして、
「...ん」っと、左手を差し出した。
「...ん??」・・・はてなマークのあたし。
「っんっっ!」・・・さっきよりちょっとあたしに近付く左手。
・・・あぁ、もしかして・・・
「んっ♪」・・・あたしはピョンっと跳ねて、その左手に掴まった。
手繋いでくれるんだね。
きっと研史なりの罪滅ぼし。
「研史、嬉しい...二人とも“ん”しか言ってなかったけど...」
研史はあたしのその言葉にギュっと手を握ってくれる。
ふと見上げると、研史は少し顔を赤くしてソッポを向いた。

