「別れても、好きでいていいですか…?」


「バイト先のヤツだ」

「へぇ。バイト先ねぇ? でもなんでバイトのコが櫂に電話かけてくるのかな~?」

 加菜子の思惑はわかっている。樫木美和が恋人なのかどうか聞き出したいのだろう。加菜子は色恋沙汰の話が大好きだった。

 だが櫂は、樫木美和と付き合ってなどいない。確かにバイト先の女性の中では最も会話をしているかもしれない。だがそれだけだ。携帯電話の番号もお互い知らないし、自宅の電話はおそらく雇用名簿か何かを見たのだろう。

 そういえば今日、樫木美和はバイト先にきていた。そのとき櫂は飲み会に誘われている。電話はその件だったのだろう。

それにしてもどうして加菜子は、女性からの電話を短絡的に恋人と結びつけられるのか、そして何より恋人の有無ではしゃぐのか、それを考えると櫂の気分は重くなる。

 肩で櫂をつつきながら恋人の有無を聞きだそうとしている加菜子の顔は見ないように櫂は呟いた。

「もしも、樫木がオレの恋人だとしたら……おまえはどうするんだ?」

「えー! やっぱり恋人なの!?」

「もしもの話だもしもの!」

「ふーん。もしもねぇ……」

 加菜子はいっとき首をひねる。

「なるほどぉ。今はまだ なりかけ中ってわけか」

「……は?」

「櫂、あなた美和ちゃんに片思い中なんでしょ?」

「なんだそれは!?」

「んー。いいのよいいのよ。確かに恋人になる可能性はあるわよねー可能性は」

 櫂は深いため息をついた。そもそもいつだって加菜子の何かしらの推理というものは当たった試しがない。それなのに彼女は、なぜだか常に自信ありげなのが やたらと不思議で仕方がない。

「もういい……」