事態は一本の電話から始まることを、このとき櫂は知る由もなかった。
「はい末里(まつり)です」
『わたし樫木美和(かしきみわ)といいますが、櫂くんいらっしゃいますか?』
「櫂ならまだバイトから戻ってませんけれども」
『そうなんですか。それじゃあバイト先へ行ってみます』
「はーい。そのようにお願いしまーす」
そういってお互いに電話を切った。
そんなありふれた通話だった。しかし、今まで櫂にかかってきた電話とはたったひとつ違いがあったことにキッチンに戻りながら加菜子は気づく。
「いまの……女の子?」
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