美和は、小さく舌を出して肩をすくめて見せた。櫂は本気でめまいを覚える。
「それがね。先月たまたま家賃を入れるの忘れちゃったのよね。そうしたら昨日 大家さんがすぐに立ち退けって。もう信じられる? ひどい話ですよね、お姉さん」
急に話をふられて、今までぽかんとしていた加菜子が我に返った。
「そ……そうよね。ひどい話よね」
「ですよね。もう人情のかけらもないって感じ」
「んな話あるわけないだろ!?」
樫木美和は、櫂がバイト先で知り合った大学生だった。彼女は今年で大学三年、櫂の一つ年上の二十一歳になる。ただし大学は別々。
櫂はただ単にバイト先の仕事仲間だと思っていたのだが、美和はそうではなかったようで先ごろ告白されてしまう。櫂は不思議で仕方がないのだが、どういう趣味をしているのか美和は櫂のことが好きだという。しかも姉を慕う櫂の気持ちを美和には知られていた。
そんな経緯もあり、美和とはちょくちょく遊びにいくようになり、彼女が一人暮らしをしているということも聞いてはいた。しかしまさかこんな手に打って出てこようとは櫂は思ってもいなかった。
「すぐばれるような嘘をつくなよ」
美和はそっぽを向く。
「嘘じゃないもの」
「どこの世界に! 家賃を一ヶ月滞納させたくらいで立ち退きさせる大家がいるんだ!」
「あそこ人気物件なのよ」
「もーいいわかった。それなら出るトコ出ようじゃないか。住人にだってちゃんとした権利ってもんがあるんだ確か。オレが今の部屋から追い出されないように協力してやる」
「な……何よ。下宿にあたっては家賃だって食費だって光熱費だって諸々まとめてお支払いしますっていっているじゃない」
「そういう問題じゃないだろ。こんな強引な手に出る大家の道理なんて通るわけがないんだから泣き寝入りする必要はない」
頑として退かない櫂を美和はまじまじと見つめる。見つめるというよりは睨んでいた。
「そんっなに、わたしをこの家におくのが嫌なわけ?」
美和の大きな瞳をしっかり睨み返して、櫂はきっぱり答えた。
「い・や・だ」
「ひどい!」
「それがね。先月たまたま家賃を入れるの忘れちゃったのよね。そうしたら昨日 大家さんがすぐに立ち退けって。もう信じられる? ひどい話ですよね、お姉さん」
急に話をふられて、今までぽかんとしていた加菜子が我に返った。
「そ……そうよね。ひどい話よね」
「ですよね。もう人情のかけらもないって感じ」
「んな話あるわけないだろ!?」
樫木美和は、櫂がバイト先で知り合った大学生だった。彼女は今年で大学三年、櫂の一つ年上の二十一歳になる。ただし大学は別々。
櫂はただ単にバイト先の仕事仲間だと思っていたのだが、美和はそうではなかったようで先ごろ告白されてしまう。櫂は不思議で仕方がないのだが、どういう趣味をしているのか美和は櫂のことが好きだという。しかも姉を慕う櫂の気持ちを美和には知られていた。
そんな経緯もあり、美和とはちょくちょく遊びにいくようになり、彼女が一人暮らしをしているということも聞いてはいた。しかしまさかこんな手に打って出てこようとは櫂は思ってもいなかった。
「すぐばれるような嘘をつくなよ」
美和はそっぽを向く。
「嘘じゃないもの」
「どこの世界に! 家賃を一ヶ月滞納させたくらいで立ち退きさせる大家がいるんだ!」
「あそこ人気物件なのよ」
「もーいいわかった。それなら出るトコ出ようじゃないか。住人にだってちゃんとした権利ってもんがあるんだ確か。オレが今の部屋から追い出されないように協力してやる」
「な……何よ。下宿にあたっては家賃だって食費だって光熱費だって諸々まとめてお支払いしますっていっているじゃない」
「そういう問題じゃないだろ。こんな強引な手に出る大家の道理なんて通るわけがないんだから泣き寝入りする必要はない」
頑として退かない櫂を美和はまじまじと見つめる。見つめるというよりは睨んでいた。
「そんっなに、わたしをこの家におくのが嫌なわけ?」
美和の大きな瞳をしっかり睨み返して、櫂はきっぱり答えた。
「い・や・だ」
「ひどい!」
