「別れても、好きでいていいですか…?」


「なんてことが、あったかもしれないよね」

 午後の昼下がり。紅茶の香りにほどよく包まれた沙奈の部屋で、樫木美和は卒業アルバムに見入りながら、沙奈の昔話を聞いていた。

 話し終えて、沙奈はダージリンティーを一啜りしたが、美和は紅茶にいっさい手をつけずに卒業アルバムへ視線を落としたままだ。

 やがて、ギギギーッと軋む音でも立てるかのように、顔を、アルバムから沙奈に向けた。

「あった『かも』しれない?」

「そ。あったかもね」

「どっちなのよ!?」

「さぁ、どっちでしょう?」

 彼女はクスクスと笑っている。前々から気づいてはいたんだが、この藤沢沙奈という人間は、なかなかどうしてかなり本気で食えない女だ。ある意味、櫂と似ている。

「物的証拠よ!」

 美和は勢いよく立ち上がって、握り拳を作った。

「第二ボタンなんて、大抵が机の引き出しとかにしまってあるんだから!」

「あ、ちょっと~」

 沙奈は、机に手を伸ばそうとする美和の前に立ちはだかった。

「そ・れ・は、プライバシーの侵害よ?」

「あるのね?」

「さぁ、どうでしょう?」

「あの話は本当なのね!?」

「だいじょーぶ」

 沙奈は、同性の美和から見てもうっとりするくらいの笑顔を浮かべる。まったくもって、こんな彼女があんな恋愛をしていたなんて、信じたく"なく"ても信じられないのではあるのだが…。

「美和のことは、誰よりも応援してるから」

 そういうと沙奈は、可愛らしいウインクを一つ、美和に送った。