「別れても、好きでいていいですか…?」

 最近の夜は肌寒くなっていた。カーディガンを羽織った姿で加菜子は櫂の隣を歩いている。こうやって並んで歩いているとき、ごく自然に手を繋いでくるのは加菜子の癖だった。それだけのことで櫂はまだ胸を高鳴らせてしまう。

たった一ヶ月 一緒にいなかっただけだ。それまではずっとこうして加菜子を並んで歩いては買い物にいったり遊びにいったりしていた。時間だけを考えれば一緒にいた時間のほうがずっと長いはずなのに、こうして並んで歩いているのはひどく懐かしい気がした。

「どぉ? ちょっとは懐かしい? ここら辺の景色」

「懐かしいってまだ一ヶ月だろ。別にどうってことはない」

 懐かしいのは加菜子と並んで歩いていること。それは懐かしさというよりは恋しさなのかもしれない。

 ふたりは近くにある公園に入っていった。ボート乗り場もある大きな公園。入り口付近の噴水は止まっていてほとんど人影もない。街灯の明かりが公園内を静かに照らしていた。

 ふたりは人工池に沿う遊歩道を歩いていく。

「美和ちゃんとは上手くやってる?」

「たまに部屋に押しかけてくるな」

「もー。押しかけてくるなんて そんないい方しないの。ちゃんとデートとかしてるの?」

「このまえ映画を見に行った」

「へぇ! 櫂にしては珍しいわね。映画なんて」

いっとくが、行きたいっていいだしたのはあいつだからな」

「何威張ってるのよもー。櫂から誘わなくちゃダメでしょ。ほんと櫂は女心がわかってないんだから」

「おまえだって男心がまるでわからないじゃないか」

「わかるもん。だてに二十三年間 女の子やってるわけじゃないのよ」

「わかるもんか。だからこの前だって振られるんだ」