「わたしは本気なの。だから、はぐらかさないで」
「おまえが想像するようなことは何もなかったよ。追いかけろといわれて加菜子に追い出された」
「……信じて、いいのね?」
「証明することはできないけどな」
「そう……」
美和は安堵の吐息を漏らした。櫂は苦笑する。
「あいつはオレたちが付き合っていると勘違いしているんだよ。とことん鈍いんだ。あの鈍さはもはや人間じゃないな」
「姉弟 似たもの同士ってことね」
「オレはあんなに鈍くない」
「わたしの気持ちに気づかなかったくせに」
反論できないのが気に食わなくて櫂は押し黙った。美和は、ようやく櫂から一本取れてクスクス笑っている。
「それで櫂くんはどうするの、これから。大好きな大好きなお姉さんには勘違いされて、自分から一人暮らし始めてもう毎日は会えないし」
「……あのさ。おまえオレのこと一体誰から聞いたんだ?」
「わたしの大学に、あなたと同じ高校出身のコがいたのよ。さらにそのコの後輩に、あなたの後輩でもある女の子が一人いるのよ。そのコ伝いに」
櫂はその関係図を描くのにしばし時間を要したが、描いてみたらすぐに該当の少女がわかった。とどのつまり櫂のことをよく知る現役高校生といったら、あいつしかいない。
「あのファザコン娘か……」
「女の子のネットワークは凄いんだからね」
「さよけ」
「それでどうするの? これから」
「どうするかな。別に何も考えてないさ」
今はただ加菜子と離れたいだけだった。それさえできればもういいと思えた。あとは時間が解決してくれる──時間まかせに、したかった。
「お姉さんを忘れるためには、距離を置くほかにもっと最良の方法があるわよ」
