「別れても、好きでいていいですか…?」


そして、櫂のその様子を加菜子は勘違いした。それがますます櫂を落ち込ませる。

「もしかして本当は付き合ってたの? あのコと。だから一人で暮らしたいって思ってたの?」

 櫂は何もいわなかった。その方が上手くまとまると思ったから。

「ごめんね。わたしぜんぜん気づかないで、ずっと部屋に入り浸りで……」

「いいんだ。もう」

「よくないよ!」

 加菜子が櫂の両腕に掴みかかった。

「今からでも遅くないよ! 早く追ってあげて! 女の子は待ってるんだよ!?」

 それが答えだったな──櫂は立ちあがった。

「わかった。追ってみる」

「うん。がんばれ櫂!」

 櫂は追うつもりなんてまったくなかった。ただ、この部屋にいる限り加菜子はずっといい続けるだろう。加菜子の口からそんな言葉は聞きたくなかった。

「おまえはここで寝ていていいから。もしかしたら帰らないかもしれないけど、そうなったら普通に出勤するんだぞ。いいか? 自分も探そうとして夜遅く出歩いたり仕事を休んだりしないこと。これはオレとあいつの問題なんだ。いいな?」

「うん。わかった……」

 念入りに釘を刺すと櫂は部屋を出た。

 その後、櫂はファミレスやマンガ喫茶などで時間を潰して、加菜子が出勤していった時間を見計らって部屋に帰る。

 折りたたみ式テーブルの上には手紙が残っていた。



──櫂へ



 わたしの無神経のせいで、迷惑をかけてしまってごめんなさい。

 これからは櫂の部屋には押しかけないようにします。

 わたしがふたりの仲をこじらせてしまったのに何もできないなんて、本当に、申しわけなく思っています。

 櫂が美和ちゃんと上手くやれるように祈るばかりです。

 こんな勘違いでふたりが別れるなんてあってはならないと思うから。なんとか誤解を解けるよう、とにかく、がんばってください。

 そして本当に、ごめんなさい。

 櫂を、わたしの二の舞にはさせたくないから……。



 それじゃ、成功を祈っています。

 がんばれ櫂!



 ぴーえす。ときどきは自宅にも遊びにきてよね。