「別れても、好きでいていいですか…?」

「きゃー! やったなこのー!」

 再び枕を投げつけようとする加菜子の手首を、櫂は素早くつかみ取った。そのまま加菜子を抱きしめる。

「え……?」

 そして、布団の上に押したおした。

 今度は、加菜子は寝ていない。

「ちょっ……苦しい……」

 櫂は加菜子をきつく抱きしめていた。加菜子の苦しそうな息づかいが耳にかかった。それでも構わなかった。今、腕から力を抜いたらもう理性が押さえきれそうにない。

「……か……い……?」

 加菜子のかすれた声が耳元でする。加菜子の匂いが間近で薫る。加菜子の細くて柔らかい肢体が、自分の体全部で感じられる。

 加菜子の耳元で櫂は囁いた。

「まずいだろう……いくらなんでも……」

「……え……?」

「きょうだいっていっても、姉と妹じゃない。兄と弟じゃない。姉と、弟なんだ。一緒の部屋で寝起きするのは……まずいだろう」

 加菜子の返答がない。もしかすると苦しくて櫂の言葉を聞きとれていないのかもしれない。櫂はそれほど加菜子の体をきつく抱きしめていた。

「だからこれは認められない。うちにきてもいいけど泊まるのはダメだ。絶対に、ダメだ」

 その言葉とは裏腹に、櫂の体は加菜子の体にどんどん反応していた。

 初めてだった。加菜子をこんなに体で感じるのは。この前の夜は我に返るとすぐに離れられたのでほとんど感触など残っていなかった。だから忘れられると思った。

 しかしもう、忘れられそうにない。

「……ダメなんだ……ダメだ……ダメだダメだダメだ!」

 櫂はまぶたをきつく閉じる。体が動かない!

 無意識に唇を重ねようとした、その瞬間。ドアベルが鳴った。

 櫂は、ほとんど反射的に加菜子から離れる。放り出された加菜子は小さく噎せていた。

「あっ……ごめん加菜子! 大丈夫──」

 またドアベルが鳴る。櫂は舌打ちした。

「うん……。わたしは大丈夫。それより……誰かきてるみたいよ……」

 息苦しかったせいか加菜子の顔は赤い。その表情からは加菜子の裡を読みとることはできなかった。三度目のベルが鳴り櫂はやむなく玄関に向かう。