「別れても、好きでいていいですか…?」


「これでここから直接通勤することもできるよねー。いちいち家に帰るの面倒なんだもん。そのうち替えのスーツとかもこっちに持ってくるから、そうなると洋服ダンスとかも必要よね。この部屋に入るかしら?」

「…………」

「さてと。お食事はもうすんだ? 片づけちゃうよ?」

「…………。……あ、ああ……」

「どうだった? 生クリームデコレーション・ハンバーグ」

「…………。……あ、ああ……奇抜な味で……良かったと思います……」

「でしょ? お砂糖とソースの絶妙なコンビネーションが今までにない斬新な味よねー。ということで片付けたら先にお風呂入っちゃうよ?」

「…………。あ、ああ……どうぞ……ご自由に……」

 加菜子は立ちあがった。食器を丁寧に洗うとバスルームに入る。部屋が小さいものだから、加菜子のシャワーを浴びる音や湯船に浸かる音がよく聞こえる。

 しばらくしてから、ベージュのパジャマに着替えた湯あがりの加菜子があがってきた。

「ほーらー櫂。何ぽけーっとしてるのよ。お布団敷いちゃうから櫂もお風呂入ってきたら?」

 頭にタオルを巻いて髪をあげ、うなじにはその後れ髪が見えた。いつも見ている加菜子の湯あがり姿のはずだ。なのに今日はいつもよりもずっとはっきり見える気がする。

 ああ……そうか。部屋が小さいから加菜子との距離も近くなっているんだ──風呂に入りながら、ようやくそんなことに櫂は気がついた。

 風呂からあがると部屋には布団が敷かれていた。布団が二組平行に。枕もきちんと並べられている。

「ほらほら見て見て! なんか旅館みたいじゃない!?」

 布団の上で加菜子がはしゃぎまくっている。

「枕投げしちゃおっか! えい!」

 ぼふっ──と櫂の顔面に枕が命中。加菜子は大笑いしている。

「かい~運動神経ないんじゃなーい?」

「……お……おまえにいわれたくはないわ!」

 櫂も負けじと加菜子に枕を投げつける。