「だってそうじゃない。一人暮らしをしたいってことは……わたしは……わたしが邪魔だからってことなんでしょ!? だからこの部屋にわたしがくるのも本当は嫌なんだ!」
「誰も嫌だとはいってないだろうが!」
「…………じゃあ、なんでそんなに怒るのよ。一人暮らしの意味がないってどういうこと?」
本当の理由を説明してしまったら、姉弟という関係を維持していくことすら困難になるかもしれない。それこそ家を出た意味がなくなる、どころか さらに悪くなってしまう。だが説明しない限り加菜子は理解できないだろう。恋人同士になれないのならば せめて仲のいい姉弟でいたいのだ。それが櫂の、一縷の望みだった。
「わかったよ。もう好きなだけくればいいだろ。勝手にしてくれよ……」
「うん! そうする!」
満面笑顔に戻って加菜子は頷いた。この女は、本当に何もわかっていないんだなぁ──と櫂は改めて実感する。
しかし加菜子もそのうち通うのに疲れるだろうし、あと一ヶ月もすれば母親も帰国するのでそれまでの辛抱だと櫂は自分にいいきかせる。
そのとたんに加菜子がいった。
「実はね。今日もいいもの持ってきたんだ」
「いいもの?」
「ちょっと待ってて」
そういうと加菜子はいったん部屋を出ていった。
そして三分ぐらいして戻ってくる。
「ほらこれ!」
持ってきたものを見て、櫂は呆然として箸を落とした。
「あと敷き布団や毛布とかもまだ車にあるの! 櫂もちょっと手伝ってよ」
「……いやだ」
そういうのが精一杯だった。
「何よケチ! いいもん。自分で運ぶから」
そういいながら加菜子は自分の寝具を狭い部屋に次々と運び入れる。
「櫂ったらお布団一組しか持ってこなかったでしょ。それじゃわたしが泊まれないじゃない。だから持ってきちゃった」
「…………」
