「別れても、好きでいていいですか…?」


 いつもは加菜子の方がよくしゃべるというのに今日は立場がまったくの逆だった。加菜子がしゃべらないと、こんなに会話が続かないものかと櫂は初めて知った。

「……じゃあな。元気でな」

「うん」

「あのな。別に今生の別れってわけじゃないんだから。同じ都内だし、オレもちょくちょく帰ってくるだろうし……」

「うん。待ってる」

「それにオレの部屋にきちゃダメだってわけでもないんだから」

「本当?」

「ああ、本当だ」

「へへ。ありがと」

 ようやく加菜子が笑った。それを見て櫂はほっとした。

いま改めて思うと、まだまだ加菜子の性格がわかっていなかったのだな──と櫂は後悔していた。だが今さら思い知ったところで もはや後の祭りでしかないのだが。

 櫂は、加菜子に「部屋にきてもいい」と確かにいった。

 しかしだがらといって毎日きてもいいといったつもりは、ない。

「か~い~。今日の夕ご飯は、お姉ちゃん特製のハンバーグだからね~」

「…………」

 キッチンというには古ぼけすぎた台所から今夜も加菜子の声がしていた。

 櫂は、大学のテキストを開いたまま終始無言だった。

「うーん。それにしてもこのキッチン、ちょっと使い勝手が悪いなぁ。アレよねー。まな板置けるスペースが狭いのよね」

「…………」