櫂はため息まじりに言葉をかける。
「こんなところで突然 好きだとかいわれたって、ハイそうですかと答えられるわけないだろう。お互いしばらく頭を冷やして、それから答えるから──」
「ほんと、イヤになっちゃう」
美和は振り返らないままいった。
「あなたって本当に神経どうかしているんじゃない? なんでそんなにいつも冷静なわけ?」
「仕方ないだろう。生まれ持った性格なんだから」
これでも充分慌てているんだといったところで信じないだろうから櫂はいうのをやめる。
「答えは、いらないわ」
「いらない?」
「櫂くんの答えは、わかっているもの。だから」
美和は振り返る。
「だから、あなたが『好き』というまでわたしはあきらめない」
美和の大きなブラウンアイがまっすぐ櫂を見据えていた。
「櫂くんはもうあきらめたんでしょう? だからきっと時間の問題よ」
ホールに人の気配がしだした。他のバイトがやってきたのかもしれない。
「これでもわたし、女としては自信あるんだからね」
美和は舌を出して「バカ」といい残すと、その場を去っていった。
