デスペリア



「……!」


口を押さえていたのが幸をそうしたか、小さな悲鳴は外に漏れなかった。


ぎし、ぎし、ぎしぃ。


――いやだいやだいやだ!


ぎし、ぎしぃ、ぎし。


――怖い怖い怖い怖いよ!


ぎしぃ、ぎし、ぎし。


――お父さんお母さんお兄ちゃん、誰か!



ぎし、ぎし、ぎし。


――来ないで来ない、で。


ぎし、ぎし、ぎ…… 。


足音が途絶えた。一番良く聞こえた場所で。


要は、“タンスの前で”止まったのだ。