近づいたものをチルチはぎゅっと抱きしめて、震える体を誤魔化そうとしたが。


「みん、な、が……」


見てしまった。

逃げ惑う人々が殺されていくのを。


衝撃的と言うには生ぬるい、驚嘆にしてはまだ甘い、恐怖にしてはまだ弱い。


どんな言葉を取っても、チルチが見た光景は日常の境界線を越えていた。


がちがちと歯を鳴らし、ひたすらにミュミュを抱きしめる。


怖い、怖いよ、と声すらも引っ込んでしまった。


ミューと、ミュミュがチルチの頬を舐めている時だった。