「きっと、お父さんもお母さんも喜んでくれるよ」


何も指摘せずに、“届くはずがない手紙”を局員は受け取った。


宛名だけで住所がない手紙が届くわけもなく、それ以前に、チルチの両親はどうあっても“届かない場所”に逝ってしまったのだ。


街全体が知る真実。チルチは、両親が死んだと気づかずに手紙を書き続けている。


誰も教えなかったのは、幼い子には酷であろうと気遣いからだった。


毎日書かれたチルチの手紙は、大切に郵便局に保管されていた。