誤算があった。


足を退いたと同時に刃先が抜けるが、魔物の体からは血が出ていなく、それ以前に刺されたという結果をなかったかのように佇んでいた。


上位の魔物だ。初めて相対する。いくら大概は出払っているとは言え、巣窟。上位の奴がそこら辺にいるのに何の疑問も投げ掛けられない。


今まで、会わなかったのが運が良かったに過ぎない。


会ったならば、人間である自分は殺されるわけだが。


「――、なぜ、殺さない」


以前、佇む魔物にはこうも言いたくなる。