もはや母に女など眼中になかった。ひたすらに死なないでと、子供に話しかける。
『頑張って、いま、今、助けるわ!』
「はいはいはい。そんなに私を怒らして、すぐに死にたいわけねー」
もう一枚の羽が焼かれた。痛むがそれより母が真っ先に思ったのは、子供に当たる、という一点だった。
燃える子供に覆い被さり、我が身をていして炎から守る。
『大丈夫、私が、ついているから、ね……』
「お望み通りにはさせないから。ゆっくりゆっくりいたぶってあげる」
遠くにも近くにも聞こえた声。次に熱さ。
痛みを伴う熱さはじわりじわりと体中に伝染していった。


