(二)


見たのは我が子が燃える地獄だった。


『あ、あああぁっ』


地獄としか言えない光景に母は悲鳴をあげるしかなかった。

顎が外れるほど口を開き、声帯が潰れるほど叫んだ。


『いや、いやあぁぁ!』


自分の悲鳴に混じって、愛しい我が子の悲痛があちこちで弾けて、倒れていく。


辺りを見回せば、そこにことの元凶がいた。


【焼けろ】


目が合うなり、有無も言わさず、羽を焼かれて落下した。落下した衝撃で足を折る。


逃げられないし、逃げる気も失せた。


『坊や、坊や!』


落下した地点――母の前に、ちょうど焼かれていた子供がいたのだ。


「ああ?うっせえよ、虫けらが!」