微力の火炎玉を出し、一発一発ゆっくりと蛾に当てた。


足元、頭、胴体。ゆっくりと燃え上がるも、死んだかどうか定かではないが、蛾は地面に伏したままだった。


『――』


最後の一鳴きなのか、蛾が肩を震わせた後、動かなくなった。


残ったのは黒ずみ。彼女はそれを踏み、かかとを擦り付けた。


「ははっ、あはははっ、燃えろ、魔物は燃えろ!みんないなくなりゃあいいんだよ!」


腕を広げ、大袈裟すぎるほど笑い果てた。


肺に溜まるのは黒い煙ばかり。


彼女は気づかない。
――もう息をするのもままならないことに。


「はは、っ、づ、はっ、あはは、はははーっ」


ひたすらに笑った。

赤い世界。
ただ一人立つ彼女は笑い続けた。


笑うしか、なかったのだ。