【焼けろ】


先手を打ったのは彼女だった。


炎が蛾の羽を焼く。片羽を負傷した蛾は落下し、ぐしゃりと肉身らしい音を出した。


『――』


「ああ?うっせえよ、虫けらが!」


『――』


「はいはいはい。そんなに私を怒らして、すぐに死にたいわけねー」


火をもう片羽に当てる。


羽がなくなった蛾は人形の赤い身だけを残し、地面を抱くように伏せていた。


『――』


「お望み通りにはさせないから。ゆっくりゆっくりいたぶってあげる」