最早、暴走にも近かった。


荒ぶった感情がリミッターを無くしているよう。


危険や危機感が抜け、彼女は踊り狂うように辺りを焼いた。


『――』


よく分からぬ音が響いたのは、いつからだったか。


さすがに彼女も気づき、音がする方を向く。


上空に目を向けた。


そこにいたのは蛾だった。


ごてごてした、見るからに鱗粉が多そうな茶色の羽を広げている。羽には眼球。身となる体は赤くなっていて、一目で敵と分かるような佇まいだった。


『――』


音はあの巨大な蛾から。羽についた眼球を血走らせ、辺りを見回し、彼女を見た。