(一) 左腕は失った。 剣を持つ右腕が無事でひたすらに良かったと言うべきか。 そも、生きていることに嫌悪すらも芽生え始めたのは、痛みからではなく、自分同様に、目の前で伏している相手に対して。 相手は黒い人影だった。あくまでも例えであり、影のように薄っぺらくはないが、死の片鱗を見せつけるそいつの存在感というのは蚊ほどもなかった。 ――魔物。 人間側である男――キツにとって、黒い影はそう言われていた。 魔物だと。人を襲う脅威だと。