デスペリア



「あーあ」


魔物が窓から出ていったのを見て、夫はその場に倒れた。


「リタ、やった、やったよ……、魔物を……魔物を撃った……」


頬を床につけながら呟く。


独り言にして、夫にとっては会話だった。


――だって、そこに妻はいるじゃないか。


お腹に手を添え、いつもの笑顔で僕の近くにいてくれる。


「男の子、かな……女の子、かな……」


初めに、現実と幻想の区別がつかなくなった。


「ねえ……名前は……どうしようか……」


次に、思い出が脳内に再生される。


「僕の、中じゃ……男の子用……と……女の子用で……名前候補がいくつか、あ、る……」


最後に涙を流しながら笑って。