足取りは弱く、階段を下りるではなく、落下する形で夫は一階につく。 しばらくは倒れたままだったが、幽霊を連想させるような動作で立ち上がり、店の外に出る。 酷いありさまだった。 あちこちに火の手があがり、まっとうな空気が吸い込めない。 「いない……いない……」 火が強すぎたために移動したか、この一画に夫が求めるモノはなかった。 「魔物、魔物を……そうだね、リタを殺した魔物を……」 ぶつぶつと呟き、移動する。平均感覚がなくなったらしく、さながら振り子のように夫は移動する。