デスペリア



「お前が、お前が!」


やがて矛先は倒れていた魔物に向く。


馬乗りになり、理性がなくなった拳で殴り続けた。


「なん、で、なんでなんで、なんで……!リタをっ、子供をっ、殺すなら僕を殺せよっ!」


指が赤くなる。腫れた、腫れを越えて皮が剥ける。


「どうして分かってくれなかった……!みんな、ただ生きているだけなのに!」


あれほど懇願したのに無視された憎しみ、愛する者を殺された憤怒、まだ産まれてもいない子を無き者にされた絶望。


「そこに、ここに、息をして、ただ生きて……っ、リタはっ、僕の愛する人でっ、大切な子供もいっしょにっ、三人で……!」


途切れ途切れになる言葉の合間合間を拳と共に伝えた。


もっとも、伝えるべき魔物は既に死んでいるが。