今、この場で、横に座っている空に口にするのは、もしかしたら運命だったのかもしれない。

出会ったときから、こうなる運命だったかもしれない。


「だけど、気付いたときには遅かった。

俺の大切な親友も、同じように妃來のことを想っていたんだ。

こういうことがあったこと、そして、それが一葉だったこともお前はある程度気付いていたんだろ」


「・・・はい」


「だから、俺たちはこの一週間、錆びついた自転車のチェーンのように上手く回っていなかった。

まあ、そのことに関してはさっき謝ったから、もう謝らないよ」


空も頷き、ここで一呼吸置く。

足元にあった小石を、グラウンドに向かって軽く投げ込んだ。



あのときの光景が頭の中に浮かび、少しだけ苦しくなる。



できることならば口にしたくはないが、だけど口にしなければいけない場面であり、口にしなければいけない人物が俺の横にいる。


「あのときは、正直参ったよ。

俺がようやく気付いた、まさしく直後だよ。

一葉に「妃來のことが好きだ」と、相談されたのは。

その場所がここだった。

そして、あの日から俺はあいつを見守る側になった、そう心霊スポットで言ったけど、そんなのは綺麗ごとなんだよ。

本当は逃げたんだ。

一葉と、片平妃來という一人の女を掛けて勝負することを逃げたんだ」


空の表情が曇っていくのが分かる。

こんな表情の空を見るのは辛いが、これだけはどうしても伝えておきたかったのだ。

それは俺が今の気持ちに嘘をつかないためにも、どうしても必要なことだから。