エレベーターが上の階に上がるにつれて、空の表情が強張っていく。

それと同時に俺の鼓動も強く早くなっていき、体の外に音が漏れているのではないかと思うくらいはっきりと分かる。

一階から十三階まで上がる時間がスローモーションにでもなったかのように長く音も無いように感じた。


「着いたぞ」


十三階にエレベーターが着き扉が開いた。

いつもだったらすぐに着くのに、一時間くらいは乗っていた気がする。


「・・・」


自分から言っておいて失礼かもしれないが、これが当たり前の反応なのかもしれない。

だけど、例え幽霊だとしても空にはこういうところから逃げてほしくないのだ。

そして、その先に見える景色を見てほしい。

だけど・・・


「止めておくか」


十三階のままエレベーターの扉は閉まり、止まったまま二人きりになった。

それでも何も言わずに黙っていたので、今日は諦めようと一階のボタンを押そうとしたとき空の手がそれを制止させるかのように目の前に現れた。


「行きます」


目を強く閉じたままか細い声で言ってきたが、その言葉には決心した気持ちが伝わってきた。