空を翔ける一筋の流れ星

公園までの道のりは大した距離ではないが、その間ずっと空は何も話さずに下を向いて歩いていた。

まるで上を見上げるのを拒否しているように、ほとんど真下を見ているようだった。



公園に着いてベンチに座ると、隣に空が座ってきた。

ほんの一時間前まではとびきりの笑顔だったのに、怯えて肩が震えていて視線も焦点が全く定まっていない。

こんなときに「落ち着け」の一声でも言って肩に手をかけてやりたいのだが、幽霊である空に俺は触れることができない。


「わたし・・・」


もどかしく思っていると、意を決したように空が口を開いた。


「言っていませんでしたが、私はマンションから飛び降りたんです。

もちろん、ここのマンションじゃないですけど」


きっと、今の青ざめた表情は飛び降りる直前と同じ表情だろう。

それくらい、空の表情は青ざめていた。


「・・・」


「私はある男の人が好きで、親友にそのことを相談していました。

だけど、その子は私の好きな人と付き合ってしまいました。

私が彼のことを好きだと知っていたにも関わらず、それなのに私の目の前に二人は笑顔で付き合ったことを報告してきました」


「それで自殺したのか」


「・・・」


二人のなかで沈黙が続き、俺たち以外誰もいない公園には生きている証を示すように鳴いている蝉の声と、ときどき通る車の音しか響かなかった。



飛び降りる直前の空は一体どういうことを考えていたのだろう。

何かを考えられていたのかどうか分からないが、その気持ちを思うと胸が痛くなった。