空を翔ける一筋の流れ星

「着いたぞ」


結局、俺は空をここに連れてきてしまった。

しつこく連れて行けとねだられたからではない、その明るさに押されたわけでもない。



幽霊といえど、やはり空には一歩前に進んでほしい・・・



俺は一緒に来ることを許してしまったのだが、果たしてこの考えはよかったのだろうか・・・



そんなことを思いながら十五階建てのマンションを見上げた。


「あ・・・」


さっきまでの眩しいくらいの笑顔は影を潜め、血の気が引き(幽霊だからもともと血の気はないだろうが)明らかに怯えている。

俺がマンションのほうに向かおうとしても、下を向きそこから一歩も動こうとしない。



しばらく何もせずに声も掛けなかったが、両肩が震えだし、小刻みに唇が動いているところを見て、ここが限界だと思った。


「下に公園があるから、そこでちょっと休むか」


マンションに背を向け、空の横を通るときに言ったのだが動かないどころかこちらを振り向きもしない。


「行くぞ」


少しだけ力を入れたつもりだったが、予想以上に空が怯えてしまった。



いや、これは俺の声にではなく、明らかに目の前のマンションに怯えているのだろう。