たった四時間のバイトを終えて、少し急ぎ足で自分の部屋へと向かう。

昼飯を食べたらすぐに帰って勉強しようと思ったのだが、結局はバイトまでずっと一葉のマンションに居座ってしまった。

一葉や妃來のようにテストの前日までに勉強をしっかりしている奴らとは違い、授業をあまり聞いていないうえに普段から勉強をしていない俺にとっては前日が勝負なのだ。


「妃來さんって、いい人ですね」


一葉のマンションからずっと笑顔の空が急ぎ足の俺の前に顔を覗かせてきた。

幽霊だからぶつかることはないのだが、急に前に出てこられると反射的に慌てて体を止めてしまった。


「危ねえよ。

それに、一葉のときもお前同じこと言ってたぞ」


それまでの笑顔が増して、漫画だと空の後ろから強烈な光が差し込んでいるような眩しいくらいの笑顔だ。

こんなに明るい幽霊が存在するなんて、霊能力者とか何かそういった人でも信じられないだろうな・・・


「いいんですよ。

一葉さんも妃來さんも二人とも凄くいい人というのが伝わってきます。

いい人と出会うとついつい笑顔になっちゃうんです」


俺と出会ったときはそんな笑顔なんて微塵も見せなかったという思いは、胸の中にしっかりとしまっておこう。



しかし、本当に嬉しそうに笑っている。

その姿を見ているととても自殺した女の子だなんて信じられないが、夜の五月台駅周辺を行き交う少ない人に空は見えない。

何事もないように俺とすれ違い、空のすぐ横を歩いているところを見ると、改めて神泉空という人物は生きていないということを思い知る。

こんなに嬉しそうに笑っているのに・・・