一葉や妃來は見えないが、空を俺の横に一応立たせてその方向に手を差し出した。


「神泉空。

神の泉のような空って、勝手だけど俺はそういう綺麗な名前だと思っている」


二人とも俺が綺麗な名前だと思っているというところで感心でもしてくれると思ったのだが、感心するどころか笑われてしまった。


「いや、勝手にそういう名前だと思っているって。

綺麗な名前だけど、どれだけ都合よく思っているんだよ」


笑いながら一葉にそう言われると、急に恥ずかしくなってきてしまった。



それまで大きく笑っていた妃來が、恥ずかしくなった俺の姿を見て大人っぽい笑みへと変えた。

一葉はその瞬間を見逃さず、それを見てわずかに下のほうに視線を落として照れくさそうに笑った。

きっと、一葉は妃來のこの表情が一番好きなのだろう。


「大学二年で歳は俺たちとそんなに変わんねえから、あんまり話しかけることはないと思うけど敬語とか使わなくていいよ」


「じゃあ、呼び捨てでいいかな」


空を見ると、無言のまま凄い勢いで首を縦に振っていて、そう言われたことが凄く嬉しいというのが伝わってくる。

本当に分かりやすい奴だ。