厨房――――――……
店長は厨房のガラス越しに、優奈と亜紀が楽しそうに話す姿を見つめていた。
はぁー…。
そして大きなため息をつく。
今日はなんだか意味がわからない。
ほんとだったら藤盛さんにはキツく注意しなくてはいけないところだが…
渡辺とかいう子は、藤盛さんの友達って言ってたか?
最初は誰だかまったく気づかなかったが、あの渡辺って子がたまに遊びに来て、あんなふうに二人で話してる姿を何度か見たことがあった。
どうもあの渡辺って子は調子が狂う。
勝手にケーキを食べたり、暇だから飲み物を買ってきていいかと言ったり…。
いったいなんなんだ。
なぜ藤盛さんが抜けださなきゃいけなかったかは知らないが…若いし色々あるんだろう。
今回は大目に見よう。
とにかく俺が言いたいことは、渡辺って子がここのバイトじゃなくてよかった…と、いうことだ。
「すまん、ケーキをもらってもいいか?」
「えっ…あ、は、はいっ!」
いつもと違う店長の態度に、パティシエは困惑しながらもケーキを差し出す。
「うまい…」
店長は疲れきった心を、ケーキを食べて癒したのだった。



