デート当日。


空がオレンジの夕日に染まる頃、私は待ち合わせの公園でてっちゃんを待っていた。


そわそわして、ベンチから立ち上がったり座ったりをさっきから繰り返している。

時折鞄から鏡を取り出し顔をチェック。
メイク崩れてないよね…うん、大丈夫。
前髪も…OK、大丈夫。

ふぅ…ダメだ、何回も気になってしまう。


鏡を鞄にしまう時、ふとある物が目に入った。


「今日は応援よろしくね」

その物に向かって小さく話しかける。


ポンポンと頭を撫でてあげ、名前を呼んだ。

「テディ」

そう。お守り代わりにテディを一緒に連れてきていたのだ。
大きめの鞄に、少し窮屈そうにすっぽりとおさまっている。

やっぱり、一人だとどうしても心細くて…。
テディが一緒だと思ったら、少しは緊張も和らぐ気がした。

テディにつけてるてっちゃんとお揃いのネックレス…ほんとは私がしたいけど、てっちゃんの前でしてたらバレちゃうから…仕方ないよね。

普段はもちろん身に付けてるけど、今日は我慢我慢。


大きく深呼吸をして、ベンチに座りなおす。
落ち着いて、落ち着いて…。
胸に手をあて呼吸を整えていると、大好きな人の姿が目に入った。


来た!
てっちゃんだ…!

少し静かになったはずの心臓がまた容赦なく暴れだす。


「おまたせ。待った?」

「ううん…!全然!さっき来たばかりだから」

「そっか、良かった。ちょっと撮影が長引いちゃって」

「そうだったんだ。お疲れ様…!」

「ありがとう」

ひゃあー…ヤバイヤバイ!
まともに目も見て会話できない…。

深く被った帽子から見える綺麗な瞳。
全く直視できなくて…チラッと見るのが精一杯。

仕事が終わって、急いで来てくれたんだよね…。

首元には私がプレゼントしたネックレス。
今日も付けてくれてる…本当に嬉しい。

私も一緒につけれたら、どんなに嬉しいことか…。


「じゃあ行こっか」

「うん…!」


とにかく、せっかくの初デート!今日は思いっきり楽しもう…!






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