* * *
エレベーターを降り部屋に向かって歩いていると、部屋の前に浩ちゃんの姿があった。
俺に気付くとハッとした表情を見せる。
ヤバイ…怒られる。
そう思っていたのに…。
「…浩ちゃんごめん。ちょっと散歩に行ってて」
「いいんだいいんだ!気にするな、楽しかったか?」
「?うん…」
全然怒らない。
なんでだ…?
断りなしで勝手に散歩に出たのに。
凄いニコニコしてるし…。
なんだか逆に不安になってしまう。
と、浩ちゃんの視線が俺の手元へとうつる。
さっき優奈ちゃんからもらった誕生日プレゼントの入った袋をジーッと見つめる。
絶対何か聞かれる…なんて言えば…頭の中で必死に思考を巡らせていると…
「…ほら、明日のためにさっさと寝ろ。散歩して良い気分転換になっただろ?なっ?おやすみ!」
そう言いながら背中を押される。
なんで聞いてこないんだ…?
違和感がありすぎて、更に不安は増す。
だけど、今はその方が好都合なのは確か…。
…とにかく早く部屋に入ろう。
そう思い一歩足を踏み出すと…
「ん?」
浩ちゃんの声にドキリと胸が鳴る。
「徹平…お前ネックレスなんてしてたっけ?」
「…うん。持ってきてたやつ…ちょっとつけてみようかなあって」
咄嗟についた嘘。
その後の言葉が続かない。
「…へー。ま、オシャレに気を使うのはいいことだ。よし、寝ろっ!」
とんっと背中を押され、俺はそのまま部屋に入った。
浩ちゃんがどんな表情をしていたのかはわからない。
とりあえず、何も聞かれずに済んだことへの安堵で、大きく息をつく。



