君ニ恋シテル

ーーー噴水の前にいるって言ってたよね…。

近付くたびに、ドキドキが速くなる。
どうしよう…緊張する。

ほんとに、ちゃんと渡せるだろうか。
プレゼントを渡すだけなのにこんなにドキドキするなんて。
こんなんじゃ告白なんて到底無理だ…。
絶対に、絶対に無理っ…!

綺麗な花々が咲く道を早足に進む。
すると、噴水の音が耳に入った。
もうすぐだ…もうすぐ、てっちゃんが待ってる場所。心臓の鼓動は更に速さを増す。


曲がり角を曲がると、ベンチに座るてっちゃんの姿が目に入った。

姿をとらえたとたん、表しようのない感情で胸がいっぱいになる。

遂に、この時がきた…。


私が来たことに気付くと、てっちゃんはベンチから立ち上がり笑顔で手をふる。

ニコッと笑い、私も手をふりかえす。

大丈夫、大丈夫…落ち着いて。
ただプレゼントを渡すだけ…。
告白するわけじゃないのだから…。

だからお願い…心臓よ静まって!


「お、遅くなってごめんね…」

「ううん、全然気にしないで」

「ありがと…」

相変わらず、てっちゃんは優しいなあ…。


「「…」」

…っ。

何か…何か話さないと!
えーっと、もうプレゼント渡しちゃう!?
でも、いきなりすぎるかな?
まずはなんて言えば………。
やっぱり普通、誕生日おめでとう?からだよね?


内心パニックに陥っていると…

「座ろっか?」

そう言って、てっちゃんがニコリと笑った。


「そ、そうだね…。座ろう座ろう」

てっちゃんの言葉に促され、2人仲良くベンチに腰を下ろす。



………。


ここからが本番だ。
落ち着いて、落ち着いて…。
プレゼントを持つ手にギュッと力が入る。

よし…!


「あのっ…!」

「星、綺麗だね」

ほぼ同時に話し出してしまい、お互い一瞬きょとんとなる。


「何?」

と、てっちゃんが私の顔を覗き込む。
驚いた私は咄嗟に視線を空へと移した。


「…っ。なっ、なんでもないよ!わあー、ほんと星綺麗だあー」

ビックリした…!顔近いよ…!
心臓が…。


正直、空を見上げながらも星空なんて全く目に入っていない。

っていうか、こんな至近距離…ますます緊張しちゃうから。


あー、なんでもないよ!じゃないでしょ私…。
もう…ほんとバカ。


すると、頬の熱を冷ましてくれるかのように、穏やかな風が吹いた。