君ニ恋シテル

数秒間の沈黙の後、渡辺さんがゆっくりと口を開く。


「やっと認めたね」

「…」

なんて言葉を返したらいいのかわからず、私はただ俯く。

と、渡辺さんは大きな溜め息をついた。


「どうして…」

「ん?」

「どうして私の気持ちに気付いたの…?私が徹平くんを好きって…」

「そんなの、見てればわかるよ」

当たり前のことを話すように、渡辺さんはきっぱりとそう言い切った。


「おかしいと思ったんだよね。急に告白大作戦とか言い出してさ」

「おかしい?…そうよね。おかしいわよね…」

自分でも、ずっとそう思っていたわ。
やってること、めちゃくちゃよね…。


「実はね、さっき徹平くんと2人で散歩していたの」

「えっ?」

「ゆうにゃんには内緒よ?徹平くんにも口止めしておいたわ」

散歩することになったいきさつを話す私の声に、黙って耳を傾ける渡辺さん。


「多分私は…早くゆうにゃんと徹平くんをくっつけて、すっきりしたかったのかもしれないわ」

自分の中にあるモヤモヤした気持ち、それを早く断ち切りたかった。

2人がくっついてくれれば、私のモヤモヤもなくなるってね…。


でも、どっかで徹平くんを諦めたくない気持ちもあって…途中自分でもわけがわからなくなってた。

呼び出す時、一瞬だけど2人になれる時間を心待ちにしている自分がいた。

それが思いがけず散歩までできて、幸せすぎるほど幸せだったわ…。

でも、こんな自分は最低よね…。


「…徹平くんとゆうにゃんは両思い。山本くんや野田さんもきっとそう思っているわ。渡辺さんだってそう思うでしょ?」

渡辺さんは私の目を見たまま、何も答えない。


2人を見ていればわかる。
好きな人のことだもの…。
少しの変化だって、敏感に察知してしまう。
それはほんと、痛いほどに。