君ニ恋シテル

ーーーバンッと部屋の扉を開くと、ゆうにゃんと渡辺さんの視線が一斉にこちらを向く。


「小沢ちゃん!」

「百合香ちゃん!……大丈夫?」

「…っ」

…大丈夫と言いたいのに、声が出ない。
息が上がって…苦しい。
全速力で走ってきたのだから、当たり前よね。

息を整えると、私はゆっくりと口を開いた。


「ゆうにゃん…徹平くんが待ってるわ。早く…行って」

「えっ…」

顔色が変わり、戸惑いを見せるゆうにゃん。


「ほら早く行きなさいな!プレゼント持って!!」

「わあぁ!百合香ちゃんっ、ちょっと!」

背中を押し、半ば強引にゆうにゃんを部屋の外へと追い出す。


バタンと扉が閉まると、私は倒れるように大の字にベッドに寝転がり、大きく息をつく。

シーンと静まり返った部屋。
ぼんやりと天井を見つめる。


「うまく徹平呼び出せたんだ?」

「……ええ」

ベッドに寝転がったまま、ワザと渡辺さんのほうを見ないように話をする。
あまり、話したくない。


「浩ちゃんには見つからなかった?」

「大丈夫だったわ…」

「へー!そっかー、それはよかった。じゃあ後は優奈の成功を祈るのみだねっ!」

「そうね…」

ダメ…どうしても声が暗くなってしまう。
これ以上話したくない。


…と、ジッと私を見つめる渡辺さんの視線を感じた。

何なのよ…。
居心地が悪くて、寝返りをうち渡辺さんに背を向ける。


「小沢ちゃん…何か隠してない?」

「隠す?」

この人はいきなり何を言い出して…。


「…渡辺さんの言っている意味がわからないわ」

ゆっくりとベッドから体を起こし、渡辺さんを見る。渡辺さんの表情はとても落ち着いていて…真剣だった。



「あは…ごめんごめん!気にしないで!」

と思ったら、急にいつもの笑顔に戻る渡辺さん。
ほんと一体何なのよ…。


「優奈と徹平、上手くいくといいね~」

「ええ…」

上手くいかないわけがない。
だって2人は…。


「ほらぁっ!」

「な、何よっ!」

「小沢ちゃん、やっぱりおかしいよ」

「おかしい…?」

「そう!おかしい!」

「おかしくなんかないわよ…」

「じゃあなんでそんな悲しそうな顔してるの?」

…っ。
一瞬、言葉に詰まった。
が、すぐに言葉を投げ返す。


「…し、してないわよ!」

「してるじゃん!今だって酷い顔してるよ!」

「なっ…!渡辺さん、あなた失礼よ!」

「だってほんとのことだもん!」

「…っ」