君ニ恋シテル

「他のみんなも、百合香ちゃんみたいに思ってくれてれば嬉しいんだけど」

「絶対みんな満足したはずよ。少なくとも、渡辺さんと…そしてゆうにゃん、この2人は確実よ!」

そう言うと、柔らかな笑みを浮かべる徹平くん。


胸がキュンとなる…。
どうしようもない。

…私、徹平くんが大好き。
ほんとに、好き。
ずっと、ずっと前から好きだった。

好きって言いたい。
伝えたい…。


だけど…

「俺も逞も、凄く楽しめたよ」

「…そう。それは良かったわ」

ぐっと我慢する。


結局は伝える勇気なんて、ないのよ…。

伝えられないわ…。
伝えられるわけないじゃない…。


Boy★2は、私の青春。
こんなに夢中になったのは初めてだった。

つまらない学園生活も、Boy★2に出会ってから輝きだしたわ。

青春なんて、私には無縁だと思っていたのに。

徹平くんは、私の初恋の人…。


「…ゆうにゃんと渡辺さんもこの星空見てるかしら?こんなに綺麗な星空、見ないなんて勿体ないわ」

「そうだね。亜紀ちゃんと…優奈ちゃんも、見てればいいね」

やっぱり…ゆうにゃんの名前を出すと、徹平くんの様子が変わる。

ほんの少しの変化だけど、わかる。


………。


心に冷たい風が吹く。徹平くんの心は…いつだってゆうにゃんに向いている。

そんなこと、とっくに気付いていた。
気付いていたはずなのに、それなのに私は…。

ぐっと、唇を噛み締める。


そして次の瞬間、私は勢いよく立ち上がった。

「いけない!ゆうにゃんに頼まれていたことを思い出したわ!」

「えっ?」

「ゆうにゃん、徹平くんに用事があるって言っていたの…すぐに徹平くんに伝えるつもりが、ついつい散歩しちゃってたわ。今からゆうにゃんを呼んでくるから、徹平くんはここで待っててくれるかしら?」

きょとんとする徹平くん。
構わず私は言葉を続けた。


「…あっ、この散歩のことは、ゆうにゃんには内緒よ?徹平くんと散歩してて遅くなったなんて言ったら、ゆうにゃんに殺されちゃうわ!」

なるべく、明るく…明るく。


「もちろん徹平くんは何も気にしなくていいのよ。私が一緒に散歩したかっただけなのだから……とにかく、ここで待ってて!いいわね?」

そのまま私は徹平くんに背を向け走り出した。


「百合香ちゃん!」

私を呼ぶ徹平くんの声。
聞こえないふりをした。
ただ真っ直ぐ、ひたすら走った。

噴水の音が、どんどん遠ざかる。



さよなら…私の初恋。