◇◇◇
「なぁー、お化け屋敷で優奈ちゃんとどうだったんだよ」
「どうって…だからさっきも言ったけど、偶然一緒になっただけで…」
何度聞いても、徹平は詳しく教えてくれない。
「手とか繋いじゃったんじゃないの?」
「なんでそうなるんだよ…」
俺の質問が余程うっとうしいのか、徹平は大きなため息をついた。
なんだよ、つまんねー。
俺はベッドにゴロンと大の字に寝転んだ。
優奈ちゃんの話になると徹平はいつも無視だもんなぁ。
まぁ…こういうところが優奈ちゃんのこと好きな証拠なんだろうけど。極端に話したがらないあたりが。
「なあ、観覧車でファンの子にアドレス聞かれてどうだった?」
「どうって?」
「なんかときめいたりとかあったかって!」
「何その質問」
何って…。
「やっぱ優奈ちゃんは特別だよなぁーって」
俺がそう言うと、徹平はまたため息をついた。
いつものお決まり。
答えてはくれない。
それは別にわかっているからいいのだけど。
でもほんとどう考えたって優奈ちゃんは特別だろ。
恋…それ以外にあるだろうか?
徹平は凄くわかりやすい。
「観覧車も優奈ちゃんと一緒に乗れたらよかったのになぁ」
「………。」
徹平は俺の言葉を完璧無視。
最後にはいつもこうだ。
だんまりを決め込む。
ずるいよなぁー。
「あっ、ってか結局優奈ちゃんからの誕生日プレゼントって…なかったな」
「だから?」
おっ、反応した。
なんだやっぱり気にしてたんじゃん。
つくづくわかりやすい奴。
「まっ、そんな落ち込むなって!」
俺はベッドから起き上がり、徹平の肩をポンッと叩いた。
「落ち込んでないって」
「はいはい」
また肩をポンッと叩くと、徹平は急に立ち上がった。
「ちょっと散歩してくる」
「あ、じゃあ俺も一緒に」
「来るな」
そう言うと、徹平は足早に部屋を出ていってしまった。
行っちゃったし…。



