* * *
『百合…香ちゃん…』
『小沢…ちゃ…ん』
誰…私の名前を呼ぶのは。
誰かが私を呼んでいる…。
『百…合香ちゃん起…きて』
『小…沢ち…ゃん!』
ウルサイわね…。
まだ寝ていたいのよ。
静かにしなさいな。
『百合香ちゃん』
はっ…!この声は…!!
「んっ…」
ゆっくりと目を開ける。
光が…眩しい…。
「百合香ちゃん!」
「小沢ちゃん!よかったぁー!」
「ゆうにゃん…渡辺さん…」
すぐ目の前に、二人の顔があった。
どうやら私は今、横になっているみたいだ。
ボーッとするわ…。
私…なぜ横になっているのかしら?
確かお化け屋敷にいたはずじゃ…。
記憶がない…。
わけがわからずぼんやりしていると…
「よかった」
ゆうにゃんと渡辺さんとは別の声が、近くから聞こえた。
この声は…
「百合香ちゃん、心配したんだよ」
ゆうにゃんの隣から私を覗きこみそう言ったのは徹平くんだった。
「…っ!」
なんてこと!
私は咄嗟に両手で顔を覆った。
「あっ…百合香ちゃん、具合悪いの?」
ゆうにゃんの心配そうな声。
「…いいえ、大丈夫よ」
全然大丈夫じゃないわよ。
徹平くんにこんな姿を見られてしまったなんて…一生の不覚。
さっき夢の中で聞こえた、ゆうにゃんと渡辺さんの声。
そして…
最後に聞こえた声、あれは…徹平くん。
そうよ私…徹平くんの声で目覚めたんだわ。
「浩ちゃーん!百合香ちゃん目覚ましたよ!」
山本くんの大きな声が聞こえた。
えっ…イヤよ!
浩ちゃん呼ばないで!
心の中で叫ぶも聞こえるはずもなく…
「おー!よかったよかった!大丈夫か?気分悪くないか?」
私を覗きこみながら話す浩ちゃん。
ウルサイわね。
見ないでよ。



